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懐徳堂創立300周年シンポジウムでロバート・キャンベル氏講演
鼎談「大阪文化の過去・現在・未来 懐徳堂から大阪大学へ」も
懐徳堂が創立されて今年で300周年となることを記念して、「懐徳堂創立300周年記念シンポジウム」が10月26日、大阪大学中之島センターで開かれ、約210人が参加しました。
まず、栗原麻子・文学部長が開会挨拶で「1724年、(今の)淀屋橋に開校した懐徳堂は、江戸の昌平坂と並び称せられる学問所となりました。大正時代に復活したものの、昭和20(1945)年の大阪大空襲によって焼失。戦後に蔵書約36,000点が大阪大学に寄贈され、懐徳堂の事業は財団法人懐徳堂記念会と大阪大学とが協力して行っています」と歴史を振り返りました。
続いて西尾章治郎総長が、あいさつで懐徳堂の業績に触れるとともに「2010年前後に本学総長をお務めであった鷲田清一先生は、『21世紀の懐徳堂』という名のもとで、社会と大学が連携をする「社学連携」というコンセプトを提唱、実践されました。大阪大学は、社会に貢献することから一歩踏み出し、社会の様々なステークホルダーの皆様との共創(Co-creation)を通して、新たな『社会を創造していく』大学を目指しています」と述べ、現在の21世紀懐徳堂の役割などを説明しました。
日本文学研究者で早稲田大学特命教授のロバート・キャンベル氏が「災禍見聞の文芸と思考~大塩平八郎の乱をきっかけとした都市観察の記録と『証言文学』の可能性をめぐる考察~」と題して基調講演。「東京の学問所があった湯島聖堂は、皆が遠くから仰ぎ見る存在だったのと対比して、『徳をいだく』懐徳堂は庶民一人一人が身近なものとしてかかわっていました」と、その特徴を分析しました。
さらに「大阪文化の過去・現在・未来 懐徳堂から大阪大学へ」とうたって鼎談も行いました。鷲田清一・元阪大総長は「産学連携に強い日本の中で、阪大は人文社会科学の出番として社学連携というもう一つの軸足を掲げました。懐徳堂は経営学ではなく宇宙や人についての基礎科学を学ばせた学問所で、自由人にふさわしいリベラルな学問を展開しました」と解説。飯倉洋一・阪大名誉教授は「民間の力で開設された懐徳堂を幕府が学問所に格上げしようとしたら、それを批判する声まで上がりました。今の懐徳堂記念会も法人会員によって支えられていて、民間の力を感じます」と述べました。さらにキャンバル氏は「阪大の社学連携は、共助の精神をもつ大阪だからこそ展開できています」とも分析しました。門脇むつみ・人文学研究科准教授が、モデレーターを務めました。
豊中・阪大博物館で企画会「懐徳堂って知ってはる?」
豊中キャンパス下の総合学術博物館では12月7日まで、企画展「懐徳堂って知ってはる?――大阪大学が受け継ぐなにわ町人の学問所」を開催しています。入場無料、10時半~17時、日曜・祝日は閉館。