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懐徳堂300周年記念イベント

EVENT

記念展覧会「懐徳堂って知ってはる？
―大阪大学が受け継ぐなにわ町人の学問所―」

展覧会
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フライヤー表紙

懐徳堂創立300周年記念展覧会

懐徳堂資料から、懐徳堂の歴史や学問の系譜を示すものを、草創期・繁栄期・終焉期・重建期に分け展観します。各時期の重要な数点をピックアップし、関係資料をあわせて展示することで、懐徳堂の学問所としての空間、その授業の実態、そこに集った人たちの交流、そこに生まれた文化などを具体的にご覧いただけるものと思います。 展示を通じて、懐徳堂の学問の精神が現在の大阪大学へと継承されていること、大阪の地における学問の命脈を感じ取っていただければ幸いです。

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主な出品資料・作品

サムネイルをクリックすると
解説をご覧いただけます。

解説：O.A.＝岡島昭浩、I.H.＝市大樹、K.M.＝門脇むつみ　いずれも大阪大学大学院人文学研究科教授

展覧会詳細情報

豊中会場

会期 令和6年(2024)10月12日（土）～12月7日（土）
※日曜・祝日は休館日。ただし、11月3日（祝）、4日（振替休日）は開館。
開催時間 10：30～17：00（16：30最終入館）
入館料 無料
会場 大阪大学総合学術博物館 待兼山修学館３Ｆ多目的室
アクセス https://www.museum.osaka-u.ac.jp/guide/access/

中之島会場

会期 令和6年(2024)10月24日（木）～10月30日（水）
開催時間 10：30～17：00（16：30最終入館）
入館料 無料
会場 大阪大学中之島芸術センター展示室（大阪大学中之島センター４階）
アクセス https://www.onc.osaka-u.ac.jp/access/
主催:
ミュージアム・リンクス（大阪大学総合学術博物館、大阪大学適塾記念センター、大阪大学アーカイブス）・一般財団法人懐徳堂記念会
共催:
大阪大学文学部、大阪大学大学院人文学研究科、懐徳堂研究センター、大阪大学21世紀懐徳堂、大阪大学中之島芸術センター
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『万年先生論孟首章講義(まんねんせんせい・ろんもう・しゅしょう・こうぎ)』
（懐徳堂文庫蔵）

懐徳堂が幕府より官許の学問所として認められたことを記念した講義が享保11年（1726）10月5日に行われました。講じたのは初代学主の三宅(みやけ)石庵(せきあん)で、これを筆記したというものが、この書です。「論語」と「孟子」のそれぞれ最初の章について講じたもので、「論語」は「子曰。学而時習之。〜不亦君子乎。」の部分、「孟子」は「孟子見梁(りょうの)恵王(けいおう)。〜仁義而已矣。何必曰利。」の部分を講じています。「論語」を講じる中で、「コノ章ヲ此(コノ)書ノ最初ニオキタルコトハ、記者ノ心アルコトナリ、学問ハコノ通リヨリ外(ホカ)ハナキ也」とあるように、懐徳堂の新しいスタートに、この二篇を選んだ三宅石庵の意図も、これらが、単に冒頭にあるから選んだわけではないでしょう。「孟子」の方には、「身ヲオサムル人ハ仁義ノ心ヲ以テ利欲ノ念ニ カツヤウニセネバナラズ」などとあり、懐徳堂で学ぶことになる商人たちの心のありようを意識したものと思われます。 末尾には、この講義を聞いたと思われる「懐徳堂開講会徒」78人の名が列挙してあり、その中に、懐徳堂創設の「五(ご)同志(どうし)」の名が見えるほか、五井蘭洲の名も見えます。（O.A.）

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五井蘭洲(ごい・らんしゅう)『刪正日本書紀(さんせい・にほん・しょき)』
（懐徳堂文庫蔵）

　懐徳堂は漢学を中心とした学問所でした（当時の学問自体が漢学を中心としたものでした）が、五井蘭洲（1697～1762）などのように、日本の文事について研究する人もいました。『刪正日本書紀』は『日本書紀』寛文版の版本に蘭洲が書き込みを行ったものですが、「懐徳堂 私の“推し”」第一回でも書いたように、漢文で書かれている『日本書紀』について、漢学者として、その漢文にみられる和習（日本人が漢文を書く時に、中国人が書いた文章には見られないようなものになること）などを、細かく指摘しています。例えば、巻二十二の憲法十七条のところでは、「行文潦草」(文章がぞんざいである)などと書き、本文の中に多数の書き込みで指摘しています。（O.A.）

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「宝暦八年定全三条（ほうれきはちねんさだめ・ぜんさんじょう）」
（懐徳堂文庫蔵）

　懐徳堂では学則として、全般的な取り決めである定約（ていやく）、学舎や学寮でのルールである定書（さだめがき）などが制定・掲示されました。写真は、宝暦8年（1758）、懐徳堂第二代学主中井甃庵（なかいしゅうあん）の死去にともない、三宅春楼（みやけしゅんろう）が第三代学主に、中井竹山が預り人に就任した際に制定されたものです。第一条は、書生間の交わりは、貴賎貧富を論ぜず、同輩とすべきである（ただし、大人と子供の区別はあり、座席は新旧・長幼・学問の進展などに応じて互いに譲り合うものとする）、第二条は、寄宿の書生の私事による外出は一切認めない（ただし、やむを得ない用事や宿先から断りがあった場合には特別に外出してもよい）、第三条は、寄宿の書生の謝礼は15歳から納めるものとする（ただし、小児であっても講筵に列してもよい）と定めています。 同種の資料に「宝暦八年定約附記」「宝暦八年定書全二条」や、「安永六年正月定書一条」「安永七年六月定全八条」があります。（I.H.）

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「入徳門聯（にゅうとくもんれん）」
（懐徳堂文庫蔵）

　漢文の対句などを二つに分けて書き、それを門などの左右に相対して掛けたものを「聯（れん）」といいます。写真は、懐徳堂の庭「已有園（いゆうえん）」の中門の左右に掛けられていた竹製の聯で、第四代学主中井竹山の筆で「学を力（つと）めて以て己を修め、言を立てて以て人を治む」と記されています。これは自己修養とそれにもとづく経世の重要性を説いたもので、懐徳堂の基本理念を表しています。この聯の掛けられた門の上には、竹山の筆で「入徳之門」と記された額が掲げられていたことから、この聯は「入徳門聯」と呼ばれています。文字・落款の一部が剥がれ、乾燥による亀裂がありましたが、平成21年（2009）に修復されました。（I.H.）

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中井竹山『草茅危言(そうぼう・きげん)』
（懐徳堂文庫蔵）

寛政の改革で名高い松平(まつだいら)定信(さだのぶ)が、天明８年(1788)の大坂滞在中に中井竹山を呼び諮問したのを契機に、竹山がこの書を執筆して定信に献上しました。「草茅」は在野・民間をあらわします。懐徳堂は官許の学問所でしたが、大坂町人からの出資であり、竹山は民間人として定信に提言したものです。65項目にわたり記された社会認識や提言は、合理的な思考が現れていて懐徳堂の学問のありかたを示す、と評価されています。 　懐徳堂文庫には竹山自筆本など、数種の本があります。この書の正式な刊行は、明治元年（1868）に京都の書店が富岡鉄斎(とみおかてっさい)の校訂によるものを出したのが最初ですが、江戸時代のうちから写本や木活字(もっかつじ)本で読まれていました。木活字本は少部数印刷で、版木による刊行と違って増刷が出来なかったこともあって、残存部数は多くなく、写本と同様に一冊ごとの違いを検討することが必要です。懐徳堂文庫にも何種かの木活字本、写本が蔵されていて、木活字本の中には、明治44年（1911）10月に杉浦重剛(すぎうらじゅうごう)が、成立して間もない懐徳堂記念会で講演したのを機に寄贈したものもあります。（O.A.）

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中井履軒手製「紙製深衣（かみせいしんい）」
（懐徳堂文庫蔵）

　中井竹山の弟である中井履軒は、五井蘭洲に朱子学を学び、長年にわたって経書（儒教経典）の研究に取り組み、その集大成となるのが『七経逢原（しちけいほうげん）』全33冊です。こうした経書の研究にともなって、周辺分野を含めて数多くの著作を著しています。その一つが明和2年（1765）10月の『深衣図解（しんいずかい）』で、これは『礼記』の深衣篇および玉藻篇（ぎょくそうへん）にもとづいて、中国古代の服である深衣の制度を考証・図解しています。その直前の9月には、写真にみるように、深衣の模型を自ら試作しています。写真は表面に相当しますが、『礼記』の記述にもとづいて、身、裳（も）、袖（そで）、衽（えり）の寸法が記されています。なお、全体に小さな文字が透けてみえますが、これは反故紙を再利用したためです。（I.H.）

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中井履軒手製「木製天図（もくせいてんず）」
（懐徳堂文庫蔵）

中井履軒の著作は経書にとどまりませんでした。経世面では『華胥国物語（かしょこくものがたり）』『有間星（あらまほし）』、歌文面では『華胥国歌合（かしょこくうたあわせ）』、科学面では『越俎弄筆（えっそろうひつ）』などの著作もあります。「華胥国」は中国の伝説的な皇帝であった黄帝（こうてい）が夢の中で遊んだとされる理想国で、それを履軒は自らの私塾に名づけていました（後に履軒は懐徳堂を離れました）。『越俎弄筆』は15枚の人体解剖図を掲げ、解説を加えたもので、前野良沢（まえのりょうたく）・杉田玄白（すぎたげんぱく）らの『解体新書』よりも1年早い安永2年（1773）に成書されました。 履軒は暦と深く関わる天体現象にも関心を示し、写真に示した木製回転式の天体模型「木製天図」や、天体図である「紙製天図」「方図（ほうず）」、月の位置によって変化する潮汐の満干を示す「潮図（ちょうず）」なども作っています。「木製天図」は太陽を中心に置き、水星、金星、地球、火星、木星、土星、二十八宿の順に配列されていますが、中央の回転盤の軸は地球となっており、履軒が太陽中心の地動説と地球中心の天動説を折衷したような認識をもっていたことがわかります。（I.H.）

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中井履軒賛・岩崎象外筆「解師伐袁図（かいしばつえんず）」
（懐徳堂文庫蔵）

　猿蟹合戦をテーマにした絵の上部に、その物語を中国古代の歴史注釈書『春秋左氏伝（しゅんじゅうさしでん）』の文体を模した漢文で添えたもの。賛は懐徳堂第四代学主・竹山の弟で多くの業績を残した履軒によります。履軒は親の仇討ちを孝と考えており、本作もその立場で制作しました。しかし、猿と蟹の話を中国古典の注釈書の文体で仰々しく表わす点は遊び心を感じさせます。絵は専門画家ではないものの絵が得意で、懐徳堂で学んだ岩崎象外によります。画面中央に中国風の衣を着して立つカニ、その後ろに控えるウス、クリ、ハリ、そして左手前に跪いて対岸の猿ヶ島を指すハサミの巧みに擬人化された可愛らしくも不思議な姿も賛の遊び心に呼応するようです。（K.M.）

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中井履軒・上田秋成賛「鶉図」
（懐徳堂記念会蔵）

露草の茂る土手に二羽の鶉（うずら）が姿をみせる絵に賛が記されます。絵の描き手は分かりませんが、鶉の羽は細密に、土手は薄墨を簡略に刷き丁寧に表現されています。右上方の賛は中井履軒の五言絶句、左の賛は『雨月物語』などで知られる上田秋成（1734～1809）の和歌で、どちらも鶉が居処を定めない性質を有することを踏まえ、その物寂しさを詠んでいます。目を引くのは履軒と秋成の賛が表具裂（ひょうぐぎれ）（絵を描いた紙［本紙］を軸に仕立てるために周囲に貼られた裂）の上に書かれていることです。通常、賛は表具を施す前に本紙に書かれるものです。しかし、履軒は他の作品でもモチーフに重ねて賛を書くものがあるなど、賛と絵の位置関係を自由に考えていた節があります。秋成の賛も表具裂にかかっているのは、その方式に秋成が倣ったからでしょうか。 　本作は昭和9（1934）年の展覧会に出品されて以降、行方が分からなくなっていたところ、平成23年（2011）にご所蔵者から懐徳堂記念会にご寄贈いただいたものです。懐徳堂をめぐる縁によって生まれ、今に遺る特別な作品です。（K.M.）

山片蟠桃
上田秋成
草間直方
中井竹山
中井履軒
富永仲基