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第43回大阪大学21世紀懐徳堂講座「ここから拓く未来」サブテーマB.「復興の知 -暮らしと心」実施レポート

「SQALF(スカルフ)~大阪大学21世紀懐徳堂 東日本大震災プロジェクト」の一環として、“ここから拓く未来”を共通テーマに、第43回大阪大学21世紀懐徳堂講座(全14講義)を開講しました。

ここでは、サブテーマB.「復興の知 -暮らしと心」 (10/26(水)~12/16(金) 計8講義)の講義要旨や、受講生アンケートに寄せられた感想等の一部を紹介します。

B-1: 10/26(水) 「震災復興と暮らしの風景」 (工学研究科・准教授/小浦 久子)

B-2: 11/16(水)「大規模災害時の被災者医療への取り組み」 (医学系研究科・准教授/鍬方 安行)

B-3: 11/17(木)「復興するために--臨床哲学から」( 文学研究科・教授/中岡 成文)

B-4: 11/25(金)「大災害の経済被害と経済復興」(大阪大学名誉教授・同志社大学教授/林 敏彦)更新

B-5: 11/30(水)「災害ボランティアの現状と展望」(人間科学研究科・教授/渥美 公秀)

B-6: 12/7(水)「災害時のコミュニケーション支援-危機管理における情報システムのあり方について」(基礎工学研究科・教授/西田 正吾)

B-7: 12/14(水)「心のケアから丸ごとのケアへ -共感縁と無自覚の宗教性-」(人間科学研究科・准教授 稲場 圭信)

B-8: 12/16(金)「危機事態の行動と心理」(人間科学研究科・教授 釘原 直樹)

 

※サブテーマA.「震災と原発―安心を築く」(9/14(水)~10/19(水) 計6講義)の実施レポートはこちら

 

B-1: 「震災復興と暮らしの風景」 

■日時=10/26(水)18:30~20:00

■講師=工学研究科・准教授/小浦 久子

■講義要旨 

東日本大震災の被災地では、多くのまちや集落で復興に向けての厳しい選択を迫られている。高台移転や津波に対する防潮堤の高さなど安全のための数値基準にもとづく選択が求められるなかで、地域の生業や暮らしの文化との折り合いが難しい状況にある。阪神淡路の経験と復興過程の調査にもとづき、予期しない災害において風景を手がかりに地域性の持続を考える。

 震災からの復興は、道路の復旧率や防災公園の整備量、住宅の着工戸数や公営住宅の供給戸数など、量的指標で示される。しかし、量的指標では地域の復興は示し得ないこと、復興は元に戻ることではないことを、阪神淡路の経験が教えてくれる。震災による滅失戸数を上回る新築住戸数というデータからは、多くの居住者が入れ替わっていること、住宅の建て方や材料の変化によりまちの風景の変化していること、近所つき合いの変化や新たなコミュニティ活動などはわからない。量的指標では見えないまちの変化の質を問う視点が求められるのである。地域の風景は変化の質を問うときの手がかりになる。

 阪神淡路大震災後10年間、学会による被災建物調査の地域分担を引き継ぎ、芦屋市の復興実態調査を続けてきた。調査から住宅復興では、住宅の建て方や形態・材料、住宅と庭の関係など、住まいの変化が景観を大きく変えていることがわかった。建て替えは一般的な都市においても発生するがその変化はゆっくりであるのに対し、被災地では急激な変化が大量に集積することにより地域らしさの喪失として人々に認識された。それが景観に現れる。道路や生活基盤を復旧させ、仕事をつくり生活を立て直すことが優先されるなかでは、地域らしさや文化、景観などの重要性はわかっていても復興現場ではなかなか言い出せないテーマであった。震災から10年がたち、芦屋では人口が半分近く入れ替わり、分譲マンションをめぐる紛争が増えた。それぞれの場所ごとに異なるまちの成り立ちや地形との折り合い方などを事業者や新たな住民に伝える必要から、これまで続けてきた景観への取り組みを景観法のしくみに移した。

 地域の当たり前は地域以外の人や事業者にはわからない。当たり前を記録する・伝えることが非常時の備えになる。能登の日本海に面する仮設住宅地は木製の間垣で囲まれていた。復興では大きな変化は避けられないが、変化の質を問うことで、地域性の持続可能性が高まる。オギュスタン・ベルクが言うところの「風景の知」を伝えることである。

 東日本大震災の被災地では復興のスピードと量が求められているところであり、生命の安全と生活再建のあり方が地域で問われている。景観を語る時期ではないとされがちだが、地域の人々の生活の当たり前のなかに風景がある。どこに住むのか、逃げる安全と津波防潮堤の高さの折り合い、生業の場と生活の安全との折り合いなど、多くの厳しい選択においては、歴史や祭りの風景、生活の風景、残った樹木や祠の記憶などに手がかりがあるのではないか。貞山運河についても、歴史的資源の修復という観点だけではなく、運河のでき方や使い方などによって異なる沿岸地域との相互関係を知り、その意味を継承することで地域復興を支える資源となるはずである。

■受講生の感想など(アンケート回答より抜粋)

・都市に住む人々がより早く、より多く、公共の利益(影観等)の重要性に気づくようになってほしい。

・緑地メンテナンスの視点についても一般基準化することができれば、一層高度な景観保全が実現できるのではないかと考えます。

・東日本大震災にかかわる部分を中心に構成してほしかった。質疑応答でのお話が興味深かった。

・風景の知も、重要なポイントになることがよくわかった。

B-1

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B-2: 「大規模災害時の被災者医療への取り組み」 

■日時=11/16(水)18:30~20:00

■講師=医学系研究科・准教授/鍬方 安行

■講義要旨

 大規模災害時には平時とは異なった医療の枠組みが必要である。わが国では、1960年代に救急業務が法制化され、1970年代に一次・二次・三次救急を階層化した現在の救急医療の骨格が整った。1995年に発生した阪神淡路大震災は、このような平時の救急体制の整備が完了して以降、はじめて生じた甚大な災害であった。同年6月に大阪大学救急医学教室によって、震災にともなう入院症例調査がなされた。被災地内病院(被災10市10町内の100床以上規模の48病院)と周辺で震災後も正常に機能した後方病院(47病院)へ調査医師が訪問し、発災後15日間に入院した全ての診療録を直接閲覧調査するという、過去に類をみない綿密な調査分析を実施した。外傷2,702例、疾病3,389例、計6,091例の入院症例が集計された。外傷では、患者動態を総合的に検討した結果、クラッシュ症候群および臓器損傷合併例において、被災地内病院にとどまった症例の死亡率(それぞれ34/169 (20%)、31/110 (28%))が、後方病院に転送され治療を受けた症例の死亡率(それぞれ 16/203 (8%)、5/67 (8%))より有意に高いことが明らかとなった。また、被災地内病院から後方病院への転送は、震災当日にほとんどなく、翌日以降1週間以内に徐々に増加したが、一方で被災地内病院での死亡数は、当日よりも翌日に増加し、以降数日間徐々に累積増加した。この結果は、クラッシュ症候群および臓器損傷例を、できるだけ早期に被災地内病院から診療機能が正常な後方病院へ転送して治療することで、予後を改善できる可能性を示唆した。疾病では、新入院例の分析から、肺炎による入院が平時の約17倍に、喘息、虚血性心疾患、脳血管疾患、消化性潰瘍が平時の約2~4倍に増加した。これら急性疾患の発症は全壊・全焼家屋が多い地域ほど増加する傾向をみた。入院中に病院で被災した例は後方病院へ転送される率が多かったが、新たに発生した疾病例は、そのほとんどが被災地内病院で入院加療をうけていた。震災による多数傷病者の予後を改善するためには、被災地内病院に搬入されたクラッシュ症候群や臓器損傷、重篤な急性疾病患者など緊急を要する治療対象を、二次トリアージによって速やかに被災地外の後方病院(災害拠点病院)へ転送するのが望ましいと結論づけた。その後、これら阪神淡路大震災の教訓を活かして、予め訓練をうけた医療チームが可及的速やかに大規模災害をうけた現地に出向き、おおむね72時間以内を目処として自己完結的に救命医療を展開するという災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team:DMAT)が組織され、各都道府県へのドクターヘリの整備がすすみ、地域防災訓練が積み重ねられてきた。2011年3月11日におこった東北地方太平洋沖地震による東日本大震災では、初期3日間に全国の救急専門医育成施設122病院などから多数のDMAT隊が現地出動し、急性期診療・患者移送に活躍したが、東日本大震災は、阪神淡路大震災とは様相を異とした。津波被害が甚大で、溺水、低体温による重症例がしばしばみられた一方で、倒壊家屋による外傷例は比較的少なかったとされる。また肺炎の多数発生も報告されているが、その全貌は未知である。被災者医療の実態を明らかにし、次世代への教訓として活かすためにも、今後の綿密な調査の実施と、その解析が重用な課題である。

■受講生の感想など(アンケート回答より抜粋)

・阪神の教訓から東北震災医療に非常に生かされたことを報告を受け、感謝いたします。マスコミ報道になかったことを説明されたことが、今後の医療に生かされることを期待したい。

・具体的な活動内容が聞けたのがよかったです。

・原発事故発生時の救命救急医療も今後必要かと思います。

・阪神大震災時医療の検証がその後の災害医療に生かされていることが理解できた。今回の震災時のDMATの活躍を具体的に知ることができた。

B-2  

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B-3:「「復興する」ために --臨床哲学から」

■日時=11/17(木)18:30~20:00

■講師=文学研究科・教授/中岡 成文

■講義要旨

 哲学の立場から、ノウハウに止まらないことについて述べたい。手足を動かさなければ復興にはならないのも確かだが、人の心を「新たにする」ことに貢献できればと思う。

1.復興する、立つ、建てる

「生きる根拠」、「復興の根拠」を問う。起こったことから、何を学べるのだろうか。

生きる根拠を考えるうえで、「土地倫理」を唱えたアルド・レオポルドの説(『野生のうたが聞こえる』講談社学術文庫)が参考になる。歴史上の出来事は、たんに人間の企ての結果ではなく、人間と土地(土壌、水、動植物を含む)との相互作用の結果である。人間も、土地という共同体の1構成員として、仲間の構成員を尊敬し、自分の所属している共同体(=土地)を尊敬すべきである、と彼はいう。ただ、「土地」よりも、「街」、人間たちの力が加わり、環境と協力してつくり上げたものが、生きる根拠と言えるのではないか。

 次に「復興」という言葉を掘り下げてみる。ドイツ語では、Wiederherstellungという。再びherstellen(つくり出す)ことであるが、いったい「つくり出す」とは何だろうか。私たち人間は自然や運命に抗って、さまざまなものを作り、「立てて」(stellen)きた。その「意地」があるので、来し方を「記念」するしるしを立てる(記念碑の建立など)ことも必要だし、復興の気持ちを支えてくれるしるし(亡き人の写真、アルバム、遺物など)も必要になってくる。他方、「意地」は、ギリシア神話でいえば人間の傲慢(ヒュブリス)に通じ、天や神の懲罰を引き起こしうるので、この点注意しなければならない。

2.人が人であるための5つの関係性

 安心・安全だけでよいのか。真の意味での、「安楽」をめざすべきではないか。

 ①  人間関係性――他の人々と

 ②  社会関係性――社会や、経済、行政などと

 ③  自然関係性――自然環境やモノ、あるいは身体と

 ④  自分関係性――自分自身と(心のバランスなど)

 ⑤  意味関係性――①~④を意味として理解する(伝統、文化的価値など)

例:石巻伝統の舞・雄勝法印神楽が、震災のため、石巻ではなく、招待されて2011年10月9日(日)鎌倉の神社で奉納された。これはとりわけ意味関係性にかかわる。

3.復興させる「当事者」は誰か

長い時間の流れ(人間の系列、歴史)を考えなければならない。復興するものは、現在の人間たちだけによってつくり出されたものではない。とくに宗教的にならなくても、先祖(災害で亡くなった人たち)の「霊」が見守り、促しているのかもしれない。釜石の海岸で犠牲者のために追悼演奏を行った指揮者もいる。将来の世代も、彼らのことを考えながら復興が行われる以上、当事者である。また、自然もある時は牙をむき、人間を痛めつけるとしても、当事者である。自然環境と共生しつつ、これを制御する努力が必要である。

 たんに「(旧に)復す」のではなく、よりよくなるように見直したい。たとえば、社会的弱者と呼ばれる人たちは、復興にどのように関われるのか。復興の本質をなす「意地」や「張り」から活力を得つつ、「思い」に過度にしばられず、それをうまくマネージ(やりくり)して、新しいものをつくり出していくことに留意したい。

■受講生の感想など(アンケート回答より抜粋)

・人の心を新たにする、という言葉をじっくり考えたいと思います。

・「復興する」の言葉がこれほど深いものだとは思いませんでした。いや、漠然とは理解していたような気もします。本当に難しいことだと思いますが、よりよい復興がなされるように、少しでも携わっていければと感じました。

・日ごろ漠然と考えていることを、整理する一端となったことはありがたかった。

B-3 

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B-4:「大災害の経済被害と経済復興」

■日時=11/25(金)18:30~20:00

■講師=大阪大学名誉教授・同志社大学教授/林 敏彦

■講義要旨更新

 「災害」とは、外因によって人間の生命・身体・財産に被害が発生すること。ベルギーの災害疫学研究所(CRED)では、そのうち、死者数が10人以上、被災者数が100人以上、非常事態宣言が出された、国際的救援が求められた、の4条件のうち、一つでも満たす事象を「災害」としてデータベースに収録している。そのデータベースによれば、近年、世界での災害件数は急増している。

 中でも日本は、自然災害の多発国で、過去100年間自然災害の国土面積当たり発生件数では、フィリピンに次いで世界で第2位、先進国中では第1位を占めている。また、災害の被害は、所得水準の低い国や低い時代には人的被害が大きく、高所得国や経済発展を遂げた後には経済被害が大きくなるという特徴をもっている。つまり、阪神・淡路大震災と東日本大震災を例外として、日本では自然災害の経済被害が大きいことに注目しなければならない。

 阪神・淡路大震災の直接経済被害は約10兆円、当時のGDPの2%と推定された。そこからの復興は、公的インフラの復旧に3年し、経済基盤等も含めた復旧に5年を要した。復興の10年間に必要となった資金は、総額16兆円、負担は公的資金が6割、民間資金が4割だった。しかし、付加価値ベースでの支出主体としては、民間の家計と企業が6割、公共部門が4割だった。この違いは、公的資金のうちかなりの部分は、民間への所得移転として使われたからだった。いずれにしても、復興とは新しい経済発展の軌跡であり、民間部門の役割が極めて大きいことを示している。

 東日本大震災の直接経済被害については、政府は16.9兆円と推定している。しかし、これは積み上げ方式による推計であり、公式統計の縦割りによる重複、脱漏、定義の不整合性を含む数字である。社会疫学的推定に基づいたある研究によると、被害額は30兆円と推定される。これに経験則としての1.6を掛ければ、今後10数年にわたって必要となる復興資金の総額は50兆円近くにもなる。

 これだけの復興投資を被災地と国民全体で負担していかなければならない。東日本大震災という三重災害からの復興は、日本に突然出現した「震災後の東北地方という新しい国」の経済発展の問題として、長期的な視野のもとに取り組んでいかなければならない。 

■受講生の感想など(アンケート回答より抜粋)

・災害の様相は個々の災害のよって異なるとのご講義がありましたが、全くその通りだと感じています。東北大震災の状況は、阪神淡路では測ることのできないほど、甚大な被害ですので、先例にとらわれない柔軟な対応が強く求められていると感じています。

・現地事情に明るく、感銘を受けました。続編を聞きたい。

・復興の大変さ、なんとなくわかってきた。人口減少時代に災害が予想されるとき、タイムリーな対応を考えていかねばならない。

・災害にどう向き合うか、実践に向けたヒントを多く提供していただけました。

B-4  

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B-5:「災害ボランティアの現状と展望」 

■日時=11/30(水)18:30~20:00

■講師=人間科学研究科・教授/渥美 公秀

■講義要旨

 (準備中です。)

■受講生の感想など(アンケート回答より抜粋)

・ボランティアの在り方について疑問を感じることがありましたが、ボランティアの本質にふれさせていただいた思いがしております。

・お話に感動するとともに、自分自身の経験も踏まえてボランティアの難しさを改めて感じた次第です。

・現在、障害者のボランティアに従事しているが、ボランティアを理論的に取り上げられた講義を聞くのは初めてで、非常に興味深かった。関係書籍など紹介していただければありがたいと思います。

B-5 

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B-6:「災害時のコミュニケーション支援-危機管理における情報システムのあり方について」 

■日時=12/7(水)18:30~20:00

■講師=基礎工学研究科・教授/西田 正吾

■講義要旨

 本講義では、まず最初に災害時における情報通信がどのような状況にあるかということを、1995年の阪神・淡路大震災、2004年の新潟県中越地震、今回の東日本大震災の3つの大災害を取り上げ、それぞれの情報通信の状況を紹介すると共に、災害時のコミュニケーションがどのような形で行われたか、またその問題点は何かについての分析結果を述べた。ここで、注目すべき点は、この16年間で、情報インフラが大きく変化したことで、阪神・淡路大震災の時には、携帯電話やインタネットがほとんど使われておらず固定電話が主であったのに対し、新潟県中越地震の時には、携帯電話やインタネットが主流となり、さらに東日本大震災の時には、それに加えて、ツィーターやフェースブックなどのソーシャルネットワークサービス(SNS)が急速に広がっていたことがあげられる。特に、東日本大震災においては、インタネットが災害に対して頑健であり、安否確認や救助要請等にSNSが非常に有効であったことが確認された。また、通信の輻輳対策として導入された「災害伝言ダイヤル・災害用伝言板」も、災害時伝言ダイヤルが300万件、災害用伝言板は1500万件の利用があり、かなり普及してきていることが示された。問題点としては、防災行政無線やテレビ・ラジオ等で緊急地震速報や大津波警報が流れたにもかかわらず、津波被害地域においてすぐに避難しなかった人が40%を越えていたこと、避難を呼びかける呼びかけ方で避難率が変わったことなどがあげられる。

 続いて、これらの状況を踏まえた上で、今後どのような方向を目指すべきか、また今後の課題は何かについて議論した。特に重要だと思われるのは、「自然と人間との共生」「人間と技術の調和型アプローチ」ということで、前者は「自然災害を自然の厳しさの一つの側面としてとらえ、長期的に世代を越えて、これと共生、共存していく」ことを、また後者は「共生していくためには、自然災害に対応する先端的な仕組み(技術、制度など)の開発を進めるとともに、人間の意識や行動もそれと協調することにより、被害を最小限に食い止める「災害対応文化」を形成することが必要」であることを意味している。

 また、具体的な今後の課題として、「迅速かつ正確な状況把握のためのSNSの活用」「災害対応におけるコマンドウェア・ヒューマンウェアの充実」「防災システムと人間行動との協調」「ほとんど情報が上がってこない被災中心地域への対応」「帰宅困難者等を想定した一般市民への情報提供」などについて考察を加えた。

■受講生の感想など(アンケート回答より抜粋)

・災害に対する対応の仕方についての分析、多くの問題があり難しいことが理解しえたと思います。

・情報システムを大局的にみるのが困難であるが、実情に応じて情報システムの変遷している。今後、どうなるか想像できない。

・ヒューマンウェアを活用した災害対策の有効性については、大いに期待されるところですが、ヒューマンウェアに内包されるヒューマンエラー(想定範囲を超える事態が発生する場合も含みます)を内包したうえでその影響を最小限に抑制するシステムの構築がハード、ソフトともに必要と考えます。非常に興味深い講義でした。

B-6 

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B-7:「心のケアから丸ごとのケアへ-共感縁と無自覚の宗教性-」 

■日時=12/14(水)18:30~20:00

■講師=人間科学研究科・准教授/稲場 圭信

■講義要旨

東日本大震災に心のケアの重要性が指摘されている。しかし、「心のケア」と構えた姿勢では、ケアにはつながらない。まずは、寄り添うことから始まる。本講義では、共感縁と無自覚の宗教性から、寄り添いのボランティア、丸ごとのケアについて話した。

 まず、医療機関による心のケアチームについて簡単に紹介し、兵庫県こころのケアセンター・副センター長である加藤寛氏が指摘する、被災の状況を聞き出すことのリスクに言及した。そして、被災者が復興・再建に向かう気力が出るのを見守り、そっと寄り添う伴走者としての丸ごとのケア(何でも屋、御用聞き、土台のお手伝い)が、心のケアにつながること、心だけを切り取って考えることの問題を指摘した。

 日本人の多くは自分は無宗教と思っているが、先祖に対する感謝の念や神仏や世間に対する「おかげ様」という思いは生きている。この「無自覚の宗教性」も支援の輪が広がっている背景にあろう。大切なことは、できることを何でもさせて頂くという姿勢だろう。そして、相手に寄り添うことが、心のケアにつながるということだろう。地域のつながりを奪われ、家族を無くし、あらゆる縁を失った人たちが、これから生きていく、それを多方面でサポートする。苦難にある人に寄り添い、ともにすることにより、その人の心が開かれる。そのような関わりが心のケアにつながるのであろう。

 四方僧伽北海道という仏教者グループの上川泰憲氏は、岩手県大船渡で、そのようなケアを継続して行っている。物資を運び、仲間の美容師がヘアカットをし、レストランシェフが中心となって食事を作り、ミュージシャンが音楽を奏で時をともにする。そこに人間関係が作られる。彼らが活動をして、北海道に戻るときには、被災者は彼らの手を取り、抱き合い、再会を約束する。そして、彼らは再び訪問する。人間的なつながりがそこにある。

 1995年、阪神淡路大震災が起き、ボランティア元年と言われた。支え合う社会に変わるように思えた。しかし、その後、日本社会のあり方は変わったのだろうか。利益と効率のみを追求し、人を物のように使える・使えないで切り捨て、自己責任論のもと個人に過剰の負担がかかる社会。勝ち組・負け組の分断社会。地縁・社縁・血縁が奪われてゆく無縁社会。利益効率、業績主義。ひとたび「駄目」とレッテルを貼られると、はい上がれない「ダメ出し評価社会」の中で、誰もが人からの評価を気にして生きた。そして、2011年3月、東日本大震災、福島第一原子力発電所事故。「支えあい」「思いやり」が大事だと捉え直す人は増えている。

 今の日本社会、他者を助ける行為、利他的行為を自己犠牲とは感じない人々がいる。お互い様、そのような相互関係の心、連帝感が生まれている。私たちの中にある、苦難にある人へ寄せる思い、共感である。あらゆる縁が弱まった社会に、今、「無自覚の宗教性」にもとづいた「共感縁」が生まれた。心だけを切り取ったケアではなく、この共感縁による支えあいの連携、被災者に寄り添う伴走者としての丸ごとのケアが重要であろう。 

 主要参考文献  稲場圭信『利他主義と宗教』弘文堂 

■受講生の感想など(アンケート回答より抜粋)

・丸ごとのケアにより、自然な形で相手に寄り添うことの重要性が理解でき、興味深かった。

・災害と宗教とのかかわりについて、心のケアに宗教の果たす役割が重要または効果的というお話がありましたが、確かに宗教者の有する受容性はカウンセリング面で大きな力を発揮されるものと感じています。

・ボランティアとネオ・リベラリズムとの親和性は考えられないのでしょうか。また、ボランティアとナショナリズムの関係をどのように考えればよいのかお聞きしたかったです。

B-7 

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B-8:「危機事態の行動と心理」 

■日時=12/16(金)18:30~20:00

■講師=人間科学研究科・教授/釘原 直樹

■講義要旨

 (準備中です。) 

■受講生の感想など(アンケート回答より抜粋)

・情報によって本来の問題点から話題がずれてしまい、結果、本当に究明されたものは何だったのかわかりにくくなっているように思います。情報が発せられる源の意図はどうしようもないので、自分自身の問題意識をぶれないように持つことが大切と感じました。

・「スケープゴート」であれば社会心理学としてもう少し突っ込んでほしかった。

・マスメディアとの接点、かかわり方についてはもっと考えていきたい課題です。震災報道は1つのきっかけであったと思います。

B-8 

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