[イベントレポート]大阪大学社学共創連続セミナー 第二回「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」

[イベントレポート]大阪大学社学共創連続セミナー 第二回「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」

2018年10月26日に開催された、大阪大学社学共創連続セミナー 第二回「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」の開催レポートです。21世紀懐徳堂の学生スタッフ、高倉が執筆しました。

READYFOR株式会社代表取締役CEOとしてご活躍される米良はるか氏を大阪大学豊中キャンパスにお招きし、「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」というテーマのもと講演会が行われました。日本初・国内最大のクラウドファンディングサービスとなった「Readyfor」の立ち上げの経験や、誰もがやりたいことを実現できる世の中の実現に向けた取り組みについてお話いただきました。

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米良さんについてのご紹介の後、早速クラウドファンディングとの出会いと現在に至る経緯からお話は始まりました。米良さんは、クラウドファンディングという言葉がなかった大学時代、スキーチームの監督に出会い、資金不足の問題に取り組みました。実力もあり活躍もしているのに、お金が足りないことで挑戦できないチームのもとに、お金を流すにはどうしたらいいかと考えた際、助成金などのかたちではなくて、みんなが少しずつ出し合うことでお金を集めればいいのでは、と考えサイトを作り資金を募った当時の経験が、現在のお仕事につながる原体験となっているそうです。


クラウドファンディングという仕組みを知ったのは、大学卒業後、インターネットについて勉強するためアメリカへ留学をしていた時だったと米良さんは語ります。


実績や担保でお金を借りるのではなく、アイデアでお金を集めるというクラウドファンディングの仕組みに共感しました。当時その仕組みがなかった日本で実現するため帰国し、今回のテーマである「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」というビジョンを掲げた「Readyfor」のサービスを、クラウドファンディングの第一人者として立ち上げました。

次に「Readyfor」というサービスの特徴や具体的な事業内容についてのお話に移ります。


さて、今回のお話の中心となる、クラウドファンディングとは何でしょう。「クラウド」=「群衆(一般の多くの人たち)」から「ファンディング」=「資金調達」をする意味の造語であり、誰かの実現したいアイデアに対しみんなが少しずつお金を出す仕組みです。


中でも「Readyfor」はクラウドファンディングのサービスを提供する際の強みとして、主に「伴走型」をとっています。担当者が一つひとつのプロジェクトをサポートし、目標達成に導く体制のことです。このこともあり、達成率(集めたい目標金額に対する実際に集まった金額の割合)が他サービス平均の30%と比べ、「Readyfor」は75%にも上っているそうです。

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お話は、個々のプロジェクトや、自治体・新聞社・地方金融機関・大学との連携事業など、具体的な事例に続きました。
小児がん患者のための無菌室をつくるプロジェクトでは、無菌室のための資金を集めると同時に社会問題を世の中に訴えることができたこと。お店の創業支援のプロジェクトでは、返済しなくていいお金であるという利点だけでなく、プロジェクト自体にそのお店のPR効果があるということ。そのほか、ロマンのある研究の特性もあり、科研費の断られてしまった人類学の研究を支援するプロジェクト例などが紹介されました。国の制度や従来のきまりの中では挑戦が難しかったことが、クラウドファンディングを使うことで、より簡単に、より面白く、より魅力的なかたちで挑戦できるようになった事例の数々でした。


クラウドファンディングを支援する際に重要なことの一つは、資金を募るきっかけとなるストーリー作りである、と米良さんは言います。プロジェクトといっても、その一つひとつのなかには人がいて、その人がそのプロジェクトをやることの説得力があるほうが、プロジェクトとして共感を得やすくなるプロジェクトになるそうです。またお金が集まりにくいプロジェクトを、コミュニケーションの力によって顕在化させることにも取り組んでいきたいという今後の展望についても語られました。

悪性リンパ腫という血液のガンが発覚し治療を受けて、一時仕事を休んでいた時が、米良さんがこれからの社会の展開について深く考えたターニングポイントであったと語ります。


AIに従来の仕事が取って代わられることが予想される将来、人々の仕事の時間は減り、余暇の時間が圧倒的に増えると考えられる。個人の価値創造活動も増えるはずでありそうした人々の挑戦を支える資金が、世界の平和をもたらす。クラウドファンディングはその第一歩ではあるが、目指すところはテクノロジーやビジネスアイデアを使い、いろいろな分野へのお金の流れをなめらかにすること。また個人だけではなく企業や財団へもお金が流れるようにすることが、これからの展望だと語りました。

最後の質疑応答では、社学共創本部の佐伯康考特任助教のコーディネートのもと、これから想定される社会の将来像とクラウドファンディングとの関わりや、プロジェクト達成に向けた伴走者としてのREADYFORの役割、米良さんが大切にされている信念についてなど、幅広い年代の参加者から様々な質問が寄せられました。

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中でも「信念は何か」という質問に対し、続けようという強い意志を持ち一度決めたことはやめない、というのが自分の強みであり大事にしていきたいことだ、と米良さんは言います。やめない限り勝てる。やめずに取り組み続ければ、最終的に何かやってくれるのではないか、という社会の期待が後からついてくるものだと考えている、とお話をされる姿が印象に残りました。

米良さんの思想・経験や魅力と強く結びついた「Readyfor」というサービスを知ったことに加えて、「やりたいことの実現」に向けた米良さんのビジョンを共有したことで、より明るく挑戦できる未来像を思い描くことができ、執筆者も背中を押される講演会でした。

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【大阪大学クラウドファンディング 特設ページは こちら

(文責:21世紀懐徳堂学生スタッフ 高倉)

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