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[イベントレポート]第49回大阪大学公開講座 前期-6「日本の介護保障を考える」

2017年12月13日(水)に開催した今年度の大阪大学公開講座、後期第6回「日本の介護保障を考える」の開講レポートです。21世紀懐徳堂学生スタッフ、平良が執筆しました。

49回目を迎えた今年度の大阪大学公開講座は、共通テーマ「老年学~輝く老いを科学する~」のもと、前期テーマを「心と体の健康」、後期テーマを「幸せな時間と空間」と銘打ち、全14回の講義を行います。

 

今回は、「日本の介護保障を考える」をテーマに大阪大学大学院人間科学研究科の斉藤弥生教授にご講義いただきました。

2017年度後期第6回公開講座

↑講義中の斉藤弥生教授

 

まず初めに、先生のご関心の来歴についてご説明があり、その後スライドを利用しての講義が始まりました。以下は、先生のお話の内容です。

 

日本では、高齢化に伴い介護ニーズが増大したことに加え、核家族化の進行や介護する側である家族の高齢化など要介護高齢者を支える家族の状況が変化しました。このことを象徴する写真として先生が提示していたご高齢のご夫婦の写真は、一見したところ介護者・被介護者の区別がつかず、非常に印象的でした。そのような状況を背景に2000年に導入された介護保険制度は、2015年にはその利用者が創設当時のおよそ3.5倍にまで増加し、一定の成果を上げたようにも思われます。一方で、介護費用の増加に伴う保険料の増額という問題にも直面するようになりました。これを受け、政府は高齢化がピークに達すると予測されている2025年までに地域包括ケアシステムを構想していますが、実現はそう簡単ではない状況です。さらに、先に挙げた介護サービスの利用者数の増大に関しても、高齢者数における利用者の割合でみるとむしろ減少しており、早急に現実的な解決策の提示が望まれます。

 

現在日本の介護保険制度は、被介護者のターゲット化、自己負担増という方向に改正が進んでいます。また要介護者の減少に成功している自治体に補助金の給付を行うことになりましたが根本的な解決には至っていません。また、介護の必要性に急を要しないとされる要支援者には、多様な選択肢を得られるとして事業化されたサービスの利用が推奨されていますが、「多様化」という言葉の裏には要支援者が切り捨てられつつあるとの懸念もあります。要支援者には独居・老夫婦の占める割合が大きく、また要介護生活の入り口や認知症の初期にいる要支援者を支えることは非常に大切です。しかし政府は、先に挙げた地域包括ケアシステムの柱として「自助・互助・共助・公助」という4つの理念を掲げており、前者2項目は「自分で・自分たちで」対処せよとの意味にも思われます。

 

国際的に比較すると、福祉国家といわれるスウェーデンなどでは社会保障に占める福祉の割合が高いのに対して、日本は年金給付の割合が高くなっていますが、これら三者の最も効果的で効率的なバランスをよく考えることが大切です。エスピン-アンデルセンによる福祉国家類型によると、各国の福祉制度は、アメリカなどが属す自由主義レジーム、ドイツなどが属す保守主義レジーム、スウェーデンなどが属す社会主義レジームの3類型に分けられます。彼は、日本の福祉制度は保守主義レジームに属すものと考えているようですが、様々な意見があります。介護保障に関しては、スウェーデン、ドイツ、アメリカを特徴的な例として挙げてその比較も行われました。また日本、アメリカ、ドイツ、スウェーデンの4か国で実施された個別面接聴取調査「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」の結果には各国ごとに多様な特色が表れており、単純な一律の国際基準の設定ではなく、それぞれの地域に合った介護保障・社会福祉のかたちが求められます。世界に目を向けると、日本のみならず各国とも介護制度においては様々な課題を抱えていることがわかります。そのひとつが、制度「外」介護の展開です。例に挙がっていたスウェーデンやドイツの場合、国外からの移民や出稼ぎ労働者などが家事サービスとの名目で実質的な介護を行っています。

 

こうした状況にある介護は、今後供給(「誰が介護をするのか?」)や費用(「誰が支払うか?」)という指標に当てはめてみても、再家族化、市場化、私費購入化など様々な進展が考えられます。講義の結びに、先生はすべての人を対象にした完ぺきな解決策を提示することはできないが、とにかく一人一人が情報を収集し、この問題に関心を持っていくことが大切だとおっしゃっていました。

 

先生の講義は、弁をふるうのみならず、参加者に疑問を投げかけて挙手を求めたり、参加者にも意見を述べる機会を与えたりしながら、参加者の理解が進むように構成されていました。参加者も熱心にメモを取ったり、感心して思わず声を漏らしたりしながら聴講していました。私自身、興味深くお話をきいているうちに講義の時間はあっという間に過ぎていった気がしました。先生が「『輝く老い』と銘打っているが、現実は厳しい状況で、なかなか『輝けない』」とおっしゃっていたのが印象的でした。

(文責:大阪大学21世紀懐徳堂 平良)

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