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[イベントレポート]日本惑星科学会 公開講演会 「月の科学の最前線」

2017年9月30日に開催された 日本惑星科学会 公開講演会 「月の科学の最前線」の開催レポートです。21世紀懐徳堂の学生スタッフ、武田が執筆しました。

 「月」に対して、人間は古代から現在まで極めて強く関心を抱いていました。「かぐや姫」伝説、お月見の風習、アポロ11号による月面着陸が行われてきたことからも、月への憧れを人は常に持っていると言えます。 

本日は、「月」を研究している、「月に最も近い研究者たち」である大阪大学大学院理学研究科の寺田健太郎先生、東京工業大学ELSIの玄田英典先生、大阪大学大学院理学研究科の佐伯和人先生にご登壇いただきました。001

本イベントは、京阪電車なにわ橋駅構内にあるアートエリアB1で開催され、広い会場も参加者で満員になりました。  

イベントには寺田先生に「月の隕石」をご持参いただきました。貴重な宇宙からの宝物に、参加者の皆さんも興味津々です。イベントの内容に関連したパネル展示を本学の理学研究科の学生たちが説明します。先生方の著作や、組み立てれば地球が出来上がるペーパークラフトも並べられ、会場も宇宙、月一色。002-1.jpg002-21.jpg002-3.jpg

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 最初に、寺田先生に「月の風」について、その仕組みと、どのようにして見つけられたのかをご説明いただきました。 

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2007年に打ち上げられた月周回衛星「かぐや」を用いて明らかになった世界初の発見、「月の風」。彗星が飛んでくるとき、その回りに「尾っぽ」が見えますが、003-2.png

(イメージ図)

地球の回りにもこの尾っぽができているといいます。寺田先生はこの尾っぽに注目し、「かぐや」が2008年に取得したデータを再解析しました。003-2.jpg

「かぐや」の観測装置は2時間かけて月の周りを一周し、月はおよそ28日間かけて地球の周りを一周し、そのうち約半日だけ、月は地球の尾っぽを横切ります。寺田先生は、月と太陽と地球が一直線になるとき、すなわち月とかぐやが地球の尾っぽを横切るときだけ、酸素を検出していたことを明らかにしました。地球から38万km離れた月へ吹く酸素の風を世界で初めて発見したのです。

奇想天外のアイデアで、昔のデータを再解析した先生。こうして、世紀の大発見が生まれたのでした。

 

次に、玄田先生に「月の起源」についてお話いただきました。 004-1.jpg

月は誕生後、地球のすぐ近くを回っていました。しかし、月は地球から年3cm遠ざかっていっています。現在、地球から月までは38万km。歩いて9年かかる距離離れています。

月が無くなるとどうなるか?地球の北半球では太陽が出たままで気温が常に50℃を超える一方、南半球は太陽が出ず常に-50℃になってしまい、潮の満ち引きはなくなり、月に探査機を送りこめず太陽系の探査・調査に遅れが生じるなど重大な出来事を引き起こします。

地球、そして地球に住む生物たちにとって極めて重要な存在である月。そんな月はどのように生じたのでしょう。

月の起源としてそれまで考えられていた捕獲説、分裂説、双子説の3つの一般説。それを変えたのが1969年のアポロ計画でした。アポロ計画で宇宙から持ち帰られた月の地殻の石は白く、さらに、月面の地震計で内部を観測したところ、厚さ50kmの地殻の岩石で覆われていることがわかりました。この白い岩石(斜長岩)の地殻をつくるためには、月の表面がマグマオーシャンで満たされていた時期が必要なことが分かりました。

この斜長岩地殻の存在は、従来考えられてきた月の起源説3つによって完全に説明されることではありませんでした。

そこで新たに提唱されたのが、「巨大衝突説」でした。 004-2.jpg

この説では、月を説明できる上、さらに90年代に入り活発化したコンピューターシミュレーションによっても実証性の高いものでした。月誕生の瞬間をコンピューターシミュレーションで試行すると、巨大衝突が5,6回起こるようになりました。そのぶつかる速度、なんと秒速10㎞。ピストルの弾丸の速度が秒速360mであることから、月が極めて速い速度で衝突したことが分かります。

(巨大衝突による月の形成は、http://4d2u.nao.ac.jp/t/var/download/Moon.htmlからご覧いただくことができます。)

一方で、「巨大衝突説」の中でも、未だに完全には整合性が取れない部分があります。それをシミュレーションで検証し、証明していこうとされているのが玄田先生です。

 

最後に、佐伯先生に、「月の探査」についてお話しいただきました。月周回探査機「かぐや」の調査で明らかになった月の地形や地質、起源と進化についてお話くださいました。005-1.jpg

佐伯先生の参加された「かぐや」チームは、チコクレーター中央丘等から純度の高い斜長石を見つけることに成功しました。このことから、月の表面のマグマの海が同時に固まったという仮説に疑問を呈し、実は、月の裏側からマグマの海が固まり始め、月の表側に固まり残りのマグマが移動しながら固まっていったのではないかという可能性を示しました。

また、「かぐや」の調査は月の永久影クレーターや竪孔構造の存在を明らかにしました。永久影を持つクレーター内部は-180℃以下という極寒の地帯で、氷があるかもしれないと考えられています。さらに、竪孔は隕石の衝突によって溶岩トンネルの天井の一部が撃ち抜かれたものと仮説が立てられ、竪孔構造に長期居住のできる便利な基地を建設することができると考えられています。今後、更なる月探査の発展が期待されています。

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最後に近年の月探査ブームについてもお話いただきました。世界各国で周回機、着陸機、探査車が作られ、ほとんど毎年宇宙に飛び立っているとのこと。さらに、関連して注目したい話題も分かりやすくお教えいただきました。再利用ロケットの打ち上げに成功した話題に、月面探査レースに唯一日本から挑戦しているHAKUTOの月面探査ローバー「SORATO」の話題など、日進月歩の開発を知ることができました。

中でも、次の日本の月着陸機SLIMの話題は印象的でした。小型の着陸機でありながら、誤差100m以内でピンポイントに着陸ができるのです。 平らではないところにも着陸する工夫として、現在考えられている仕組みは、しっぽの長い犬が

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(イメージ図)

最初にしっぽから月面に着陸して、しっぽで衝撃を吸収し、しっぽ→後ろ足→前足の順番で着地していくことで、傾いた月面でも、安定的にピンポイントに着陸できるというものです。

佐伯先生は、「かぐや」の地形地質カメラの開発とその運用、データ解析をされていました。探査機を用い地質や地形を探査されている先生に、最先端の月探査事情を教えていただきました。

 

後半は質疑応答タイムから始まりました。参加者が質問カードに記入して提出した疑問について、先生方に答えていただきます。

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中でも印象深かったたのが、「一般の人が月に旅行に行くことは可能か?」という質問でした。実際に現在も計画が進んでおり、10年も経たないうちに旅行できるようになるとの回答に、会場からも感嘆の声が聞こえました。

 

今回の講演会は、9月27日~30日に大阪大学で開催された日本惑星科学会主催の講演会で、分析/観測(寺田)、モデル計算(玄田)、探査(佐伯)という、まったく異なる手法で月の最先端に迫る研究者たちが一堂に会する特別な会となりました。

 

最後に、先生方に本日のイベントの感想を伺いました。 006-2.jpg

寺田先生によると、今回の3人の先生それぞれが一般の方向けの講演会を行っていますが、3名で話をするのは初めてで、月を解明するアプローチ方法や着眼点の違いは、研究者同士にとっても新鮮で楽しかったとのこと。

参加者の方からは、「最先端の研究を分かりやすく、面白く学べた」という声が多く聞こえ、おおいに盛り上がったイベントとなりました。

  

(文責:大阪大学21世紀懐徳堂 武田)

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