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[イベントレポート]Handai-Asahi中之島塾「大阪弁ぼちぼち講座〜ものの言いかた、大阪人vs東北人」

2016年5月21日(土)、金水敏教授(文学研究科)の「大阪弁ぼちぼち講座〜ものの言いかた、大阪人vs東北人」は、和歌山大学教育学部の澤村美幸准教授をゲストにお迎えしての、講義というよりは軽やかトークな90分となりました。

 

 このレポートを読まれている方に質問です。

 以下のような場面で、あなたは「ありがとう」と言いますか?もしくは、周囲の人が「ありがとう」と言っていても不自然に感じませんか?

1.買い物をしていた店を出る時。

2.注文をした料理を店員がもってきてくれた時。

3.食べ終わった皿を店員が下げに来た時。

4.レジで支払いを済ませ、お釣りを返された時。

5.バスを降りる時、運転手に。

6.列車内で切符の検札を受けた時、車掌に。

7.友人に貸していたお金が戻ってきた時。

 

 受講生のみなさん(大阪大学中之島センターまで気軽に来られるエリアにお住まい、且つほとんどの方が関西圏のご出身でした)の、大半の方が1〜5で挙手をされました。

H-A金水02

  その結果を待っていたかのように、澤村先生は「東北人の私はどれも「ありがとう」とは言いません」とひとこと。講義室内には驚きの空気が流れました。澤村先生によると、感謝をしていないわけではなく、これらの場面で感謝の言葉を積極的に口に出して言う習慣がないのだそうです。

 澤村先生は山形市のお生まれ。東北大学大学院で博士号を取得された後、大阪大学での研究のため関西に移り住まれて以降、同じ国内で転居したとは思えないほどのカルチャーショック続きの日々を過ごされているのです。

 なかでも仰天だったのが大阪の友人の結婚式に参列した時のこと。同じく招待客の友人Aと新婦Bの会話です。

友人A/おめでとう。めっちゃきれいやったでー。

新婦B/ありがとう。そんなん言うてもらえてうれしいわぁ。先週整形しといてよかったわぁ。

友人A/いや、ほんまに美人花嫁やったでぇ。整形間に合ってよかったなあ。

 隣で聞いていた澤村先生は絶句し、「そんなことないよ~、元からきれいだよ」ではなく、「「間に合ってよかった」などと同調するなんて、格式ばったお祝いの日なのに失礼なのでは?」、「本当に整形だと誤解されたらどうするんだろう?」!と、ヒヤヒヤされたそうです。

 「「整形しといてよかった」は、ボケであり謙虚さを示す自虐であり、次の展開を相手に渡すフリ。受け手側にしても間に合ってよかったと、否定ではなくカブせていく(のっかる)のは非常に高度な技です。けど、大阪人はこれを瞬時に理解し、返し、聞いている周囲も笑って見ている。

 ブラジルの少年たちが常にサッカーのある暮らしの中でサッカーの技術を磨いていくように、大阪では小学生の頃から自然にしゃべりを鍛えあっている。小学校のイベントで必ず漫才の出し物がありますよね、みなさん当たり前だと思われてるでしょうけれど、はっきり言って大阪が異常なんです!」と金水先生。「異常です!」と言われて大笑いをしている受講生のみなさんもみなさんです。

H−A金水03

  また大阪では、顔を合わせたら、おはようのあいさつから本題にいきつくまでの間、ほとんど意味のない「お約束」と言われるやりとりや相手にからむこと自体を楽しみます。正しく話すより楽しく話すことに重点がおかれ、ウケるためなら少々話を盛ってもよいとの風潮が調査データからもみてとれました。

  あいさつの教育はどちらかと言えば関西において顕著にみられるものであり、全国、とりわけ東北を中心とした東日本ではそこまで徹底してあいさつをするという習慣がないそうです。だから、震災の後のACジャパンの「あいさつをしましょう」の啓蒙に、大阪人は、「なにをわざわざ?」と違和感をもちました。バスの降車時に「ありがとう」とあいさつするのは、年配者よりむしろ子どもに多いのは、近年になってそのような教育がなされているからです。

 組織内であいさつを徹底し士気や結束を高めるという表層の文化・教育より以前の、もともと「地面にある文化」としてのコミュニケーションの発達には、大阪の歴史的背景があります。

 金水先生が考えられるに、「秀吉の時代、大坂は人口40万人のうち、武士はたったの2%、しかもほぼ全員が大阪城内におり、町中は商人による元禄バブルに沸き、享楽的でした。人々がいかに話すことに情熱を傾けたか、想像できます。人形浄瑠璃や上方歌舞伎は江戸歌舞伎の「荒事」と対称的に、饒舌の演劇とよばれ、選りすぐりの話芸の名人が市井の人にも影響を与え、大衆演劇の隆盛につながります。多様な人が集まる都市ではコミュニケーションの重要性が増し、ビジネスチャンスに貪欲な商人の言語文化が栄えました。」と結びました。

 澤村先生は2014昨年8月に『ものの言いかた西東』(岩波新書)を東北大学の小林隆先生との共著で上梓されましたが、読者から「関東と関西出身の夫婦間でどうしてもわかりあえないところがあり、なぜそんな失礼なことを言うのかや、してくれないことに対して深い溝が存在していました。けれどこの本を読んで、ああ、こういうことだったのかと長年のわだかまりが解けました」などの感想が寄せられ、たいへんうれしかったそうです。

 講義中に筆者が感じたことですが、「ありがとうより、おおきに、言います」「わたしは、ごちそうさま、やわ」や、「バス降りる時お礼言うようなったのは最近ちゃいますか。中学生以下の子らの方が多いですよ」など、大講義室の後ろの方からも随時、意見をおっしゃる方がおられました。軽妙な金水先生の講義や、受講生が臆せず発言できる今この状況全体が、大阪人気質を体現していることだなあと感じました。

H−A金水01

(文責/21世紀懐徳堂 沢村有生)

 


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